コア技術の棚卸し×136の有望成長領域分析で“両利き経営”のヒントをつかむ

東プレ株式会社

URL
https://www.topre.co.jp/
業種
製造業
課題
  • 既存技術と特許を生かし未来の成長領域へチャレンジ
  • 外部視点での強み棚卸しで開発事業を活性化
  • 縦割りの事業部間コミュニケーションを活発化

コア技術の棚卸し×136の有望成長領域分析で“両利き経営”のヒントをつかむ

プレス技術をコアテクノロジーとして自動車部品を主軸にさまざまな分野で成長を続ける東プレ株式会社。既存事業の競争力を高めるだけでなく、高い技術力を応用して新規事業の開拓にも情熱を持って取り組んでいる。アスタミューゼとの出会いによってどのような成果を得たのか。開発部長の石井宏氏と主席研究員の津田学志氏に聞いた。

インタビュイー:東プレ株式会社 開発部長 石井 宏明 氏 主席研究員 津田 学志 氏

石井氏:経理・人事・原価管理などの業務系部署を経験し、その後経営企画部にて全社中期経営計画の策定を担当。2014年からは製造部門に異動し、埼玉工場の工場長や九州地区での新工場設立プロジェクト責任者を務める。2022年より現職に就き、開発部門の統括を担当。

津田氏:空調機器部を経て現在は開発部に携わる。空調機器部では、住宅用24時間換気システムの開発に従事。開発部においては、ナノ水力発電システムの開発、現在は住宅用全館空調換気システムの開発を展開。

老舗企業であるがゆえに自由な事業アイデアが出てこないジレンマ

御社の事業内容をご紹介いただけますか。

石井:東プレ株式会社は、1935年に「東京プレス工業株式会社」として創業しました。名前の通り、当初はプレス技術と金型製造を基盤に自動車部品市場で事業展開を進め、さらに技術を生かして、冷凍・冷蔵車、空調機器、電子機器など、幅広い分野へと事業を拡大しています。自動車部品では、軽くて丈夫なハイテン材(高張力鋼板)を製造できるのが大きな強みです。

1985年には現在の「東プレ株式会社」に社名を変更し、国内外での事業拡大を本格化しました。自動車分野ではアメリカ、中国、タイ、メキシコ、インドなどに拠点を持ち、冷凍・冷蔵事業ではインドネシアにも進出しています。これにより、グローバル市場での競争力を一層強化し、さらなる成長を目指しています。

アスタミューゼにご依頼いただいたきっかけは?

石井:アスタミューゼを知っていた津田さんからの誘いで、2023年10月の脱炭素ウェビナーに参加しました。両利きの経営というテーマでいろいろなセミナーに参加していた時のことです。

当時の課題を教えてください。

石井:私たちだけでは、イノベーションや事業の拡大に限界があると感じていました。新しいことにチャレンジすれば、技術も企業も育つはず。でも、うまくいっている既存事業への依存度が高く「東プレとはこういう会社だ」という固定概念が強いので、その延長線上でしか新しい発想が生まれません。新しいことに挑戦しようという気持ちはずっとあるのに、良いアイデアが出なかったり、十分なエビデンスが出せなかったり、アイデアがいいのか悪いのか評価できる人もいないので、結局芽が出ても途中でつぶれてしまいます。そこで、外部の視点で弊社の新たな可能性を探りたいと考えていました。

津田:89年もの間、お客様からのフルオーダーに応えるために必死に技術を磨いてきたわけですが、技術の棚卸をしてこなかったので自分たちの強みが何なのかわかりません。なので、技術の棚卸からスタートして、持っている技術を最大限に生かせる事業領域を知りたいと思っていました。

アスタミューゼに依頼した理由は?

石井:他社も検討しましたが、アスタミューゼはデータの保有量が他社とは比べものにならないほど膨大で、確かなデータや根拠に基づく具体的な提案を期待できると思ったからです。「どんなデータがあるのか、のぞいてみたい」という個人的な興味もありました。

データ分析で自社が持つ技術の素晴らしさと可能性を再認識できた

約1ヶ月のリサーチを経て、136の有望成長領域における新たな事業展開案を10案ご提案させていただきました。どのような感想をお持ちですか?

石井:最大の成果は、我々が注目していなかった自社技術や特許の価値に気づけたことだと思います。自分たちの特許を過小評価していたので、「他社が特許を取ろうとしたけれど東プレ社の特許があって取れなかった」という話を聞いて驚きましたね。

組織内では長年の経験や既存の成功に基づいた「色眼鏡」をかけてしまい、新しい視点で物事を見るのが難しくなりがちです。そうした状況下で見落としていた技術や特許にスポットを当てていただけたのは非常にありがたいことでした。

津田:実は、提案していただいた案の多くが開発したけれど商品化に至らなかったものや、開発を断念したものだったので、そうしたものに別の角度から光をあてて改めて可能性を提案していただけたのは良かったと思います。例えば10案のうちの1つ、ケミカルヒートポンプが再生エネルギー分野で活用できるという提案は意外でした。以前開発に着手したものの事業化の見込みが立たずに中止となり、今ではもう忘れられていた技術でしたから。時代の一歩先を行って一所懸命研究していた開発者の努力が報われたような気がしましたね。またこうした開発をやってみたいと感じた参加者も多くいたようです。

それから、事業部間でお互いの技術の素晴らしさに気づけたことも大きな成果でした。自動車、冷凍車、空調部は縦割りでお互い何をやってるのかよくわからないのですが、今回の探索で「〇〇部はこんなすごい技術を持っているの?」「いやいや、そちらの方がすごいじゃないですか」と気づいて褒め合うことができました。「会社がやれることはまだたくさん隠れている」と感じましたね。

石井:今回と同じ品質の分析を社内でやるとなると、10名チームで行っても3カ月はかかるでしょう。アスタミューゼに頼めば1カ月で出てくるわけですから、スピードは3分の1に短縮できたといえます。

プロジェクトに関するやりとりで何か印象に残っていることはありますか?

石井:新規事業創出において「魔法の杖はない」という現実を伝えてくれたことが印象的でした。新規事業のアイデアを得たとしても、そこから泥臭い愚直な努力をしなければ決して成功できません。このことを最初の段階から伝えてくれた正直さが、アスタミューゼを信頼できる大きな要因となっています。

津田:組織が抱える課題や背景を深くヒアリングした上で実践していく。現実的な視点を持ちながら前に進む方法をアスタミューゼから学びました。

サービス利用前と利用後でアスタミューゼのイメージに差はありますか?

石井:当初は「スマートでクールな方が多い会社なんだろうな」となんとなく思っていましたが、実際に言葉を交わさせていただくと、一緒になって考えてくれる熱いハートの持ち主が多くて意外でした。

サービスを活用する中で、良かった点、こういった点があればより良かったという内容がありますか?

石井:良かった点はとにかく仕事がスピーディなこと。それから、我々の愚痴(悩み)をしっかり受け止めてくれたこと(笑)。反省点は、弊社から会社情報をもっと共有すべきだったということですね。我々が技術情報をもう少し上手くまとめられたら、さらに深い分析ができたのではないかと思います。

データ分析で生まれた新しい視野でイノベーションに向かって邁進したい

石井:東プレ株式会社は2035年に創業100周年を迎えます。常に自社技術を社会に役立てることを喜びとし、絶え間ないイノベーションによって自動車部品業界から冷凍・冷蔵業界、空調機器業界、さらには電子機器業界へと事業の幅を広げてきました。先達が築き上げてきたこの精神と歴史を私たちがしっかりと受け継ぎ、それを誇りとして未来の社員へと引き継ぐことが今の私たちの使命であり責任だと考えています。

御社が描く今後の成長戦略を教えてください

事業としては、我々にない技術を持つ将来性のある企業と協業するオープンイノベーションに取り組みたいので、この辺りのデータ分析もアスタミューゼに期待しているところです。

個人的には脳科学の観点からアスタミューゼのデータに関心があります。例えば、ラグジュアリーホテルに行ったらなぜ高級感を感じるのか、空間と人間の心理との関係はまだ科学的に解明しきれていないので、そうした分析をデータ活用でできたら面白いと思います。

M&Aのご提案も可能ですのでどうぞご期待ください。今後、アスタミューゼに期待することはありますか?

石井:事業アイディアを育てるための壁打ち相手になっていただきたいと思っています。これから新規事業の担い手となる若手の育成にも力を貸していただけたら嬉しいですね。

津田:今回作成していただいた提案書を見て、私もどんなステップで開発を進めていけばいいのか大いに勉強になりました。全てを真似ることはできないでしょうが、他の社員にも可能な限り共有して事業開発の知見を深めたいと思います。

アスタミューゼを推薦するならどのような会社にすすめますか?

石井:弊社のようにある程度、事業年数を重ねた会社にすすめたいですね。過去の成功体験にとらわれて自分たちを変えるような発想が湧いてこない会社が思い切って相談すれば、きっと大きな発見があるでしょう。自社では発想できない企画を実現する圧倒的なデータと分析力がアスタミューゼの魅力。自社が関わる世界が広がるかもしれないと思うと好奇心が刺激されるはずです。

御社にとってアスタミューゼはどのような存在でしょうか

石井:“未知の世界を旅するために同行してくれるアテンド”=信頼できるガイドであり、新たな可能性を広げてくれるパートナーです。

津田:私にとっては、“開発を外から支援してくれる会社”です。先の見通しが立ちにくい開発事業は社内の理解を得られないことが多々ありますが、客観的なデータで開発の将来性を示し、周囲の理解を促して開発を後押ししてくれるパートナーだと感じています。

最後にひとことアスタミューゼにメッセージをお願いいたします。

石井:弊社に新たな世界を見せていただきありがとうございます。アスタミューゼは我々の可能性を広げてくれました。今後ともよろしくお願いします。

津田:今回の取り組みで共通言語を社内に吹き込んでくれました。我々の次のステップでまた力になっていただきたいと思います。。

これからもご一緒に新しいことにチャレンジして参りたいと思います。本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。

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